無人戦闘機は近接戦闘では人間に勝てない

無人戦闘攻撃機「X-47B」にゴーストは宿るか
X47-Bであれば、無線操縦とGPS航法装置を併用し、さらに衛星通信装置なども備えて自律的な飛行を実現しています。とはいえ、人間が判断していた部分を完全に置き換えるには至っていないので、近接戦闘では簡単に負けてしまうでしょう。

 ゲームの世界では、基本的に AI がプレイヤーの相手をお務めする。このとき、近接戦闘だろうがなんだろうが、簡単に人間に負けるようでは噛みごたえのないゲームになってしまう。

 実際に無人戦闘機を作るより、ゲームのほうが有利なのは、センシングの必要がないことだ。必要があれば敵 AI はワールドに出現している全誘導ミサイルの情報を取得できるし、そのうち自分に向けて発射された誘導ミサイルを取得することも余裕で出来る。しかし、偏差射撃の機動をとる機体から「自分を攻撃するかもしれない」と察知するのはひと手間かかる。それでも人間が操作している機体のみに絞れば警戒させることは簡単だし、プレイヤー機が偏差射撃ができる武器をどれほど持っているか、その射程はどの程度あるかを調べて判断材料にすることができる。

 問題は、 AI がそういった「情報のズル」「センシングのズル」をするとゲームが面白くなくなる場合があるということだと思う。例えば、「アドバンスド大戦略」に代表されるような、 "策敵範囲" のあるウォーシミュレーションゲームで、敵軍の AI が策敵範囲外のユニットの動作を「推測する」のか「メモリから情報を拾う」のかでは、まるで話が違ってしまう。プレイヤーと同じ土俵で勝負する方がフェアだし、プレイヤーも盛り上がるが、どこかで「弱い」という壁にぶちあたってしまう。メモリから情報を拾う場合は、アンフェアだが、敵 AI が大域的な戦術で遅れをとることがないので、適度な噛みごたえになり、上級者のプレイヤーも AI 相手に遊べるというメリットがあるかもしれない。しかし調整をミスればプレイヤーにとっては策敵範囲を利用した作戦を立てること(たとえば陽動作戦とか)に喜びがなくなり、結果として策敵システムというゲームシステム自体が無意味なものになってしまう。

 敵 AI ごとに画面をレンダリングして認知プログラムを走らせるわけにはいかないので、関連情報をメモリから拾ってきて AI の判断材料に使うのは仕方がないとして、拾ってくる情報に人間的なフィルタリングをどの程度かけるのか。敵 AI が "強い" という設定のとき、どうやって強くするのか。「近接戦闘では簡単に負けてしまう」ではダメなわけで。現実的な解決策としては敵 AI が強ければ強いほど「勘」を強くするしかないというところがあるが……

 そう考えると敵味方が同じ土俵に乗っているゲームを作るのって面白くもあり、大変でもある。「ゼルダ」みたいに、ボスが明らかにプレイヤーと違う次元にいて、ダメージを与える方法を探して倒すゲームの方が技術的に楽だよね……そのボスのアイデアを考えるのが大変なんだけど。