300年後に存在しないであろう仕事は現在進行系で無うなってく

 わしね、アプリ実装を担当するプログラマはいつまで必要かで書いたけど、300年後にはアプリケーションプログラマは存在しとらんと思う。その頃には「こういうプログラムを作ってーや」とコンピュータに音声で頼みゃあ、プログラムを吐き出してくれる時代になっとるじゃろう。

IT翻訳者が注意すべきテクノロジー
このエントリを書くキッカケは、「あれ? IT 翻訳者が家内製糸工業的なやり方でメシを食える時代ももうすぐ終わるんじゃない」と漠然と思ったことでした。もし下の妄想が現実になった場合、こういった事項を理解しなければならない人はドキュメントのオーサー、翻訳者や翻訳会社の経営者はもちろん、技術系企業に務める会社員など広範囲に及ぶことでしょう。それまでに自分がどのような道を歩めるのか、いやこれ結構すぐ、本気で取り組まないと仕事なくなりかねないです。マジで。


 アプリの実装も簡単な翻訳も、300年後には機械化され、仕事としては消滅しとるでしょう。300年もかからんかもしれんけど、その300年後の世界に向けて、(一時期退行する時期があったとしても)おおむね「消滅」に向けて時代は進歩していく。じゃけん、人間の仕事は現在進行形で、目の前で、だんだん無うなっていきょうるんよね。

機械化は未来の話でも非専門職化は今の話

 わし思うんじゃけど、「人間の仕事では無うなる」の前に「専門職能の仕事では無うなる」という時期があるんじゃないかと。

 わしのおる業界も id:LYE さんのおる業界も……その他大勢の業界も、いまそういう段階じゃないかと思います。完全機械化って、300年後はともかく、今の技術レベルだとお伽噺な感じするじゃろ。ほいでも、機械や技術のサポートが入るけん、専門職能はいらんという感じにはどんどんなってきようる。前の産業革命のときもそんな感じで、専門職能の仕事が、素人+機械でできるようになった。あのときはwikipedia:ラッダイト運動っちゅうのが起きて、みんなで工場を襲撃して機械を破壊して回ったりしたんよね。(-_-;

 たとえば、わしらグラフィックのソフトでグラディエーション塗りをすることなんか、マウスクリックすりゃ簡単にできるじゃないですか。あれだって、アナログで絵を作りょうる時代においては、エアブラシの専門職技術で、あん人らの飯の種じゃったらしいんよ。 "グラディエーション塗り機能" みたいなのが機械化されただけでも、ある業界においては革命的な出来事で、人間の仕事がガッツリ減った。ごときと言っては失礼じゃけど、わしは塗り機能 "ごとき" でそがぁなことが起きたなんぞ、人から話を聞くまで想像したことも無かった。

 じゃけん今わしらの周りで起きとる技術的な革命の影響度なんかホンマ半端じゃ済まんと思いますよ。そもそもプログラマだってそういう変遷の中で生まれたニワカの専門職なわけじゃし。

 で、わしらの例で言っても、上層のプログラマの仕事は実際無うなっていきょうる。タイトルによっては、ゲームプレイコードをC/C++プログラマじゃなくてスクリプタが実装する例がどんどん出てきょうる。わしは上層のスクリプトは、プログラマの仕事が楽になる技術でも定時で帰るための技術でもなくて、プログラマが(ゲームプレイの)プログラムを書くことが無うなる時代へ向けての技術じゃと感じとる。

 ものすごく簡単に、直感的に、人間的にコードを書くことができるスクリプト言語があるなら、ゲームデザイナーが直接使やぁええわけじゃろ。そこに今のプログラマはほとんどいらんと思うんよ。スクリプタの時代じゃと思う。欧米はもう完全にそういう時代へ向けて突き進んでいきょうる。*1

専門の意味するところは更に濃いところへ

 はぁこの流れは止められんし、実際、創作面でも制作面でも理にかなっとるし、技術者なら止めたいとは思わんじゃろ。それにプログラマの仕事が完全に無くなるわけじゃない。300年後の世界では、アプリケーションプログラマはおらんじゃろうと書いたが、そのプログラム生成AIを開発する技術者はおるじゃろう。同様に、フルスクリプトドリブンゲームに、プログラマは人数的にはほとんど関わらんかもしれんけど、エンジンを作るプログラマは必要。専門職能だけで食ってくつもりなら、今後はそういったレベルが要求されるようになるじゃろう。

 時代の進歩によって、なんとなく濃い技術力が要求されない世界になって、雇用が広がっているように見えるよ〜な気がするのと、現実は反比例しとる。これからは専門職に要求される技術はどんどん先鋭化して、しかも席数は今より確実に絞られる。新技術の恩恵に預かる側に回るか、新技術を成立させる側に回るか。専門職能だけで給料を取るなら、後者にまわらにゃいけん。

 わしらの業界の技術者は、まだ低レイヤーにシフトしやすい(みんな経験がある)けん、幸運なほうじゃと思う。産業革命の時代じゃったら、「昨日まで靴下を編んでたのに、今日から靴下を編む機械のメンテをしなければいけない」と言われとったかもしれん。そんなん対応できんですよ。完璧に違う技術じゃもん。

 あと、前のエントリでも書いたけど、新技術の恩恵に預かる側に回るのもありじゃと思う。たとえばスクリプタになってゲームプレイコードを書く側に回るとか。

 もちろん別のセンスも要求される。なんぼスクリプトを書くのがうまいんじゃ言うても、そのスクリプトで書いたゲームがおもろくなきゃ企画課には入れんかもしれんし、フルフルに給料はもらえんじゃろう。でも、元々それがやりたかった人にとっては、選択の時が来たんじゃと思う。

 といっても、たいがいの人は、技術は大好き、でもゲームを作るのも好き!という感じじゃろうけぇ、リアルな意味で選択の時が来たら面談室で悶えると思うけど……

まとめ

 そがぁな感じで、技術が進歩し、状況が変化していくのは技術者にとっては見てるだけでも爽快じゃけど、その裏には、「他人を便利にすると給料が上がるが、他人に便利にされると給料が下がる」という専門職能の生活感あふれるジレンマもあったりする。(^^;

 まぁジレンマっちゅうか、これが技術者の世界における正当な競争ですよね。

 わしらはイノベーションの時代に生きとるけど、それは同時にラッダイトの時代でもあるということ。「おお、技術はすごいことになっとるのう」とのんびり眺めとることができる時代じゃないです。けど選択の時でもある。じゃけぇ、みんなで頑張って、なんとか今回のイノベーションはええ時代じゃったということにしたいですね。 (*^o^*)

 長くなったんで中柱入れました。だらだらすません。

*1:これはつまり日本の日本型企画職の方も時代の変遷に完全に巻き込まれとるということ