とりあえず受託開発はなくならない

 先のエントリのコメント欄に、龍司兄貴からコメントをいただきました。

と、ここまで書いてみて、これじゃやっぱり業者はもうからんかもしれんとか思った(^^;

 cubson GUI Force のキュンビットなどは、RPGツクールと同じ「命令を並べる」「プリセットされた分岐」などでイベントを作成するので、できることは非常に限られる。わしの頭の中で思い描いとるのは、「アマが使うものはアマで作れるようにしよう」という話なので、受託開発には使えんじゃろう。そもそも命令を並べてプログラムを作るというのRPGツクール始祖以前の古来からあるアプローチじゃけん、これで業務がこなせるならとっくにそうなっとるじゃろう。実際にそういう開発環境も存在するけど、基本的には教育用になっとる。

 それはそれとして、仮にツールキットがそれなりにまともなアプリケーションを作れる機能を持っとったとしたら、兄貴やわしらは路頭に迷ってしまうんじゃろうか。基本的にこのへんの事情はエンターテイメント物とマジメ物では事情が違うけん一概には言えんということに、今更ながらハタと気づいた。

 まずちょっとゲームというか、エンターテイメント側の事情なんじゃけど、
 一部のゲームユーザーは、 MOD やツクールを含むゲームエディタによって生み出される UGC を楽しく遊んで満足し、ゲーム会社からゲームを買わんようになりよる。また、 YouTube に投稿された動画を見ることが楽しくて満足し、プロが作ったアニメを見ようとせんっちゅー事態も起こりよーるかもしれん。

 何にお金と時間を使い、どう満足するかはユーザーに選択権がある。100億かけて作ったゲームより、公務員が趣味でゲームエディタを使って作った無料ゲームの方が面白い!とその人が言えばその人はそのゲームを買うてくれん。ゲーム人口は今後も増え続けるけど、必ずしもゲーム市場と比例せんかもしれん。

 けどこれは、金を出す人が、「おもろいことで時間を潰したいけど、なんがおもろいんかよう分からん」という状態じゃけん、起こりうること。「何にお金と時間を使い、どう満足するか」はユーザーが決めることとはいえ、ユーザー自身がそれに明確な希望(要求仕様)をもっとるわけじゃない。エンターテイメントではユーザーが詳細仕様を決めてゲームや映画を探し、マッチするまで食い下がる、なんてことはないけんね。

大河ドラマ尼子経久」が見たいなぁ。主役は渡辺謙で、完全な撮影のために城跡になっとる月山富田城を再建して、全編島根県でロケしたやつ以外は認めない。

 みたいな作品を求めとる人は、ホンマにそれを観よう思ったら、金を出して作ってもらうしかないじゃろ。

 でも、エンターテイメントはみんなそんな探し方はしとらん。じゃけん、
「こんなゲームはどうっすかあああ、5800円です」
「いやいや、こんなゲームでどうっすかああああ、120円です」
「いやいやいやいやいや、こんなゲームでどうっすかあああああ、無料です」
 ってこっちからアプローチする。
 それに対して、ユーザーさんは、
「おー、じゃあこれでもやってみるかー」
 って言って、数ある選択肢からひとつ選び、必要なら金を出してくれるわけです。

 おもろいことしたいな、おもろいもん見たいな、わしにとっておもろいってのはこんな感じなんじゃけどな、というのはあるけど、

「うーん、尼子経久見たいけど、まぁとりあえず昔やってた毛利元就のDVD買って帰るか。経久も出とるし」

 みたいに、簡単に別の物で代替できる。だって無いもんはしょうがないですよ。

 けど、マジメ物の場合は、マジメな事情から仕様が決まっとるけん、金出して作ってもらうしかないわけじゃないですか。たとえば、なぜかフォーラムと社員成績が連動するシステムが必要だとしてですよ。それが絶対必要なら、「まー、似とるけん、ただのvote付フォーラムで代替するか」ってわけにはいかんでしょう。

 ツールキットの正統な発展によって「誰でも簡単に作れる」世の中になっても、なにも直接仕事がなくなるなんてことはないと思います。趣味の制作物が増えて、「それで十分です」というユーザーさんが増えれば、間接的な影響で仕事がなくなるだけのこと。それが一番起こりやすいのは要求仕様がないに等しいエンターテイメントで、要求仕様があってそれと完全にマッチしてないと困るというマジメ物は当分大丈夫じゃろうと。音声で発注したらその場でアプリを作ってくれるAIが完成するまで大丈夫です。

 ディベロッパーの敷居が下がることで、ディベロッパーが増えて、単純にディベロッパー間で仕事の奪い合いになる、ということはあり得ると思うけど、それはいつの時代、どの業界でも起こっとる話じゃしね。