2016年の英語学習を(突然)総括する

2016年5月から外資系の会社に転職し、勤務地も大阪に変わって、通勤時間が大幅に短縮されました。今年はこの有り余る時間のほぼ全てを英語の勉強に注ぎ込み、一定の手応えを得たものの、「東京時代でももっとやれることがあったなぁ」という反省をしています。突然ですが、少しまとめましたので、同好の士の年末の暇つぶしにでもなればと思います。

TOEICスコア続伸の違和感

約半年にわたる英語の勉強を経て、会社で英会話で仕事を進められる割合や、英語ミーティングの理解率・参加率がじりじりと高まっており、主観的には達成感を感じていますが、客観視するためにも定期的にTOEICを受験して数値化しています。直近の3回ぶんのスコアを表にしましたので、ご覧ください。2015年10月は前職時代に受けた最後のTOIEC、2016年6月が転職した翌月に受けたテスト、2016年10月が勉強の効果測定のために受けた最新のテストです。

受験年月 Listening Reading Speaking Writing
2015年10月(前職最終成績) 310 305 90 150
2016年6月(現職当初成績) 405 280 130 170
2016年10月(現職最終成績) 390 390 120 190

合計スコアでみるとLRが615→685→780、SWが240→300→310と伸びており、順調に英語力がついていっているようにみえます。しかし、私が英語の勉強に本腰を入れ始めたのは2016年6月ですから、あまり勉強していない時期にスコアが伸び、勉強している時期にスコアが停滞するという結果になっており、釈然としないところもあります。

たとえば、2015年10月→2016年6月までは前職の仕事と引継ぎと送別会で毎晩のように飲み歩いておりました。体重力を上げた覚えはあるのですが、英語力を上げた覚えはありません。大阪に来てからも、最初の一か月はそれほど英語を追求しておらず、むしろ粉物を追及していました。

というわけで、2015年10月→2016年6月は停滞期にあたるはずなのですが、実際にはリスニングが310→405、スピーキングが90→130と急上昇しています。iKnowと英会話スクールを散発的に通う程度しかしてなかったのに、なんで?

一方、2016年6月→10月の間は、オンライン英会話スクールを追加し、各分野の勉強に毎日3時間を注ぎ込み、昼休みにも毎日外国人の同僚とランチに行って英語だけで会話する「英語ランチ」を設けるなど、英語への時間投入量を激増させました。しかし、蓋を開けてみるとリーディングとライティングは伸びているものの、英会話で直接駆使するリスニングとスピーキングは停滞しています。

なお、このように前職時代の英語力は本当に低かったので、お前そのスコアで過去3冊も翻訳に関わっていたのか!というツッコミがあるかもしれません。が、翻訳の質は、「俺はこの本を日本語で読んで欲しいんだ!」という愛と時間、情熱と根性と友情と時間、そして闇落ちしない強い心とレビューと時間があれば上がりますから問題ないと強弁しておきます。

私はこうして英語を勉強している

スコアが伸びてないのに勉強法を書き留めてもなかなか参考にしづらいと思いますが、書いておきます。私の勉強法は、英会話、リスニング(ディクテーション)、グラマー、ボキャブラリー、ライティング、リーディングの6分野を1項目25分、毎日行うというもので、その継続性はiPhoneアプリの「Streaks」で管理していました。

英会話

  • オンサイト英会話スクールではGabaに通学(週2回)
  • オンライン英会話スクールではBizmatesを利用。
  • ランチタイムは外国人の同僚と英語ランチ

オンライン英会話(Skype英会話)は、過去にはレアジョブやラングリッチ、またBizmatesと並行してDMM英会話も試していたのですが、最終的にBizmatesに一本化しました。

Bizmatesは、ビジネスマナーをテーマにした独自の教材を用いて英語を学ぶオンライン英会話です。原則として、教材を1章ずつ消化していく形で進捗していくので、気軽にログインができます。講師も(他と同じく当たり外れはあるものの)非常によくトレーニングされている印象です。

最初は、「ビジネスマナー=表層的なやりとりのテクニック」という先入観を持っており、私が学習したい英語とは違うジャンルのことだと考えていましたが、受講してみるとビジネスのテクニックというより、「人間の常識」「良識ある人間の当たり前の物事の捉え方」「立ち振る舞い」を教わるという性質が強く、言語関係なく非常に勉強になっています。ひとつ学ぶたびに、過去の自分を思い出して恥じ入り、悶絶しています。

そういう意味では、プログラマにこそお勧めです(どういう意味だ)。

リスニング(25分)→ディクテーション(25分)

  • 海外のドラマを字幕なしでみる
  • 最近はディクテーションに変更

リスニングは、当初は「ドラマをみる」という夢のような勉強法で、1日3時間というきつい勉強量の中で息抜きにもなり、電車の中でもできました(といっても大阪の生活では、25分も電車に乗っていませんが)。が、これを英語力がついたことにあわせて、ディクテーションに変更してからは、一日でもっともきつい勉強になりました。

どうしてもまだ区間再生や、音声のスロー化に対応したアプリケーションを使わないと書き取りを始めることもできないため、自宅で腰を据えてやっています。

コツとしては、単に聞き取った音声を書き取るのではなく、聞き取った情報で英文を再構築することが重要らしく(聞き取れなかったけど、そこはwhatやろ、みたいなやつ)、おそらく慣れてくれば電車の中でもできると思います。当初はこのコツがよく分からず、繰り返し音声を細切れに聞いて、聞き取れたものを書き取って、最後に字幕をオンにして見比べていたのですが、これはこれでどのような音を聞き取れなかったのかということと、その法則みたいなのが自分の中でわかってきたので参考にはなりました。

音源としては、GDCが近いのでGDCの過去講演のビデオを使用しています。

グラマー(25分)

  • 毎日の英文法 頭の中に英語のパターンをつくる
  • TOEIC TEST 文法特急シリーズ
  • English Grammar in Use

「毎日の英文法 頭の中に英語のパターンをつくる」は、表題の通り、自分の中で英語のテンプレートを作って、部分的に入れ替えて、言いたいことを言うために購入し、マニュアル通りシャドーイングして一旦丸暗記しました。

TOEIC本については、当初はTOEICのスコアが英語力と乖離した形で不当に上昇してしまうのではないか、と当初は遠ざけていたのですが、ある程度のレベルで適切な量の英文があり、そこに解説もついている本ということになると、どうしてもTOEIC関係の本ということになってしまいます。

前職の先輩の強い勧めがあり、また、英語の勉強の相談に乗ってくれてる友人からも、別に問題ないのではないかというアドバイスをもらい、文法特急シリーズを手に取りました。結果としては品詞の概念を生まれて初めて強烈に学ぶことになり、たいへん勉強になりました。掴み所のなかった霧のような「英語」がある程度ルールとして腹落ちした感じです。

「English Grammar in Use」は、前職の頃、一年かけて放課後読書会で読破した英文法の名著。iPhone版のアプリの出来がたいへんよろしく、最近はこれを何周もして勉強しています。

ボキャブラリー(25分)

私の語彙力の勉強はここ数年はすべてiKnowにお任せしています。このサービスの素晴らしいところは、同じ単語を何度も出題してくれる点です。一度正答すると記憶ゲージがわずかに上昇し、間違うとガッツリ下がるのが基本ルールで、記憶率100パーセントを目指して反復学習に取り組みます。最初の方は毎日のように同じ単語が出てくるものの、正解を続けていくと、再出題の間隔が1週間、2週間、1ヶ月と徐々に間が開いていくのが特徴。

1〜2週間の間が空いた時は覚えているが、1ヶ月開くとすっかり忘れてしまう。ということで、記憶ゲージ100パーセントを目指して一進一退の攻防が続きます。100パーセントに至ると、その単語がマスター扱いになるのですが、そこから数ヶ月が経過すると、再び出題されるようになります。

まるで低予算タイトルのアセット使い回しのようなしつこさ…!しかし、このようなしつこい復習は、自己管理ではなかなか難しいでしょう。下記のグラフをご覧ください。上がiKnowで学習を開始した総単語数、下が「マスター」扱いになった単語数をプロットしたものです。上のグラフは出題が始まった時にカウントされますが、下のグラフは一ヶ月近い反復宿題を乗り切らなければカウントされません。このグラフを見ると、年始にiKnowに本腰を入れて「開始単語数」がどんどん増えているにも関わらず、「マスター」単語数は数ヶ月ズレて上昇しているのがわかると思います。

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ライティング(25分)

25分英文を書くのは難しくないですが、添削を受けないと正しい英語を書いているかどうかがわかりません。自動的にできる添削として文法チェッカー「Grammarly」を使い、さらに書き終えた文章をLang-8に投稿したり、Gabaの文章添削サービスに提出したりしていました。また、添削はBizamtesなど、多くのオンライン英会話スクールに依頼することもできます。

リーディング(25分)

当初はゲーム開発技術系の英文を読んでいたのですが、「技術知識を持っているため、読めてないのに、読めてしまう(分かってしまう)」という感じになってしまったため、こちらは勉強時間にカウントしないようにしました。そこからは、いい英文と、答え合わせのための訳文と解説がついている教材探しの旅が始まりまして、ここでもTOEIC本を使いました。これに関しては他に選択肢があまりない(隔月刊の多聴多読マガジンくらいしかない)ので、迷いはなかったです。

会社のメールやドキュメントの90%が英文なので、触れる英文の量は格段に増えています。ですから、勉強時間としてリーディングを行う際は、しっかり意味を取るように心がけています。

東京時代でもできた?

当初は、東京から大阪に引っ越したことで通勤時間が激減し、英語の勉強に時間を投入できるようになったと考えていたのですが、勉強方法がまとまってくると、ディクテーションと英会話以外は電車の中でも普通にできるので、東京にいた頃も長時間の電車通勤をうまく使って、もっとやればよかったと後悔しています。

また、現職は外資ということもあって英語勉強の機会が非常に充実しているのですが、前職も社内でTOEICが受けられたり、マンツーマンのネイティブ英会話教室があったり、放課後に有志の英語勉強会が週二回あり、自宅では取り組む気になれないシャドーイングに皆で集中的に取り組めたりと、いま思えばなかなか充実しておりました。

当時は仕事も忙しく、週二回の英会話教室など焼け石に水だと思っていましたが、お金払って英会話スクールに行ってもあんなもんだし、いまなら必要十分だったとわかります。あとはオンライン英会話で補えば良いので。スピーキングスコアがなぜか転職直後に受けたテストで伸びていたのも、おそらく前職時代のシャドーイングのおかげかなと思います。

当時必ずしもすべての機会をうまく活用できていなかった点は後悔です。この種の環境が充実している会社は少なくないと思うので(しかしたいてい勤めている人は知らない)、皆さまもお勤め先の制度や有志の勉強会の有無を一度調べてみることをお勧めします。

発毛剤のジレンマ

Google などの機械翻訳も発達してきました。いずれ、人々の意識や働き方も変わり、翻訳機をつけていても他の人と同じように交流したり仕事をさせてくれるようになって、英語の勉強をしなくても困らない時代が来るかもしれません。しかし、その時期が自分のキャリアパスと一致するかどうかは、誰にも保証できません。

私はこの問題を「発毛剤のジレンマ」と名付けました。「20年後に本当に毛が生える毛生え薬が開発される」として、あなたは「だったら髪の手入れの時間を、別のことに使おう」と思うか、「ふざんけんな!いま髪が必要なんだよ!いま!」と思うか。年代や、意中の相手(会社)によって、答えは変わります。英語にのるかそるか、こればかりは自分で判断するしかありませんが、髪の毛に置き換えれば判断がしやすくなるのではないでしょうか。

ひとつだけはっきり言えるのは、いま学生の人がいて、授業に英語が組み込まれているのであれば、その時間の使い方に本来自由はないのですから、しっかり勉強しておいたほうがよいということです。

勉強量について

おそらく大多数の日本人の基礎英語力は、私より高いはずで、週21時間も突っ込まなくても、もっと短い時間で良好な結果を得られるのではないかと思います。私はあくまで高校入学以降の英語勉強放棄の代償をいま支払っているところがありますので。

また、言語習得は困難な道とはいえ、実はある程度の段階まではコストパフォーマンスはそこまで悪くないのではないか?という気にもなっています。昔から、「大学を最後に英語を勉強していない」という理系出身者が出張先で英語を使いこなしてるのをみて「なんなのこいつら」と不思議に思っていたのですが、仮にそれがTOEIC750〜800くらいのスコアなのだとすると、皆さんはすでにその力を持っているか、持っていなくても最悪一年足らずでそのレベルまで到達できるのではないか、と思うのです。これだけでも相当な英語のビデオやドキュメントを引いて活用することはできます。ジレンマは、その後の話ですね。

とりあえずこの半年で「橋頭堡」は作れたと思うので、私も今は少し時間を減らして、技術の勉強も増やしています。あくまで英語最優先であるべきですが、どうしても興味のあることがありまして……その結果、英語のレベルがどこに至ったかは、また2017年末に報告できればいいなと思います。

まとめ

喋れると思ったら言葉が出ず、

聴き取れると思ったら聴き取れず、

あらゆる構文が分かると思ったら解釈不能な構文が現れ、

語彙力は十分と思ったら、知らん単語に束で遭遇し、

書けると思ったら、書けず悶絶し、

どんな英文も読めると思ったら、何をいってるのかわからん英文が舞い込む

それが英語...!

来年も頑張ります。