あなたのPCをポータルにする 100-CPU001
2018年1月末、日本を含む世界各地の会場に集まった参加者がその場で編成した即興チームで48時間以内に即興ゲームを作るイベント「Global Game Jam」が開催された。多くの人が心を踊らせる一方で、ある問題が人々の頭を悩ませる---そうPC運搬問題だ。PCをどうやって会場まで運ぶのかだ。
私は今年のGlobal Game Jamは東京会場に参加する予定でエントリーも済ませていた。しかし、その時点ではどうやってPCを持ち込むかの算段まではついていなかった。横浜在住時代、iMac、Alienware X51などのポータルデスクトップPCで参加したことがあるものの、現行のPCはタワー型であり、ポータブルの範疇には入らない。大阪から東京への参加となると車に積んで行くのも勇気がいる。行きはよいよい、(睡眠不足になりがちなイベントの性質上)帰りは怖いだ。
イベント直前まで計画していたのは、ポータブルPCケースに買い換えて、中身を丸ごと移し替えることだ。 この製品「PC-TU300」を見ていただきたい。
2015年に発売されたこのATXケースは、ケース上部にフリップハンドルを持ついわゆる「おかもち」型のケースだが、専用オプション「TU-01」を追加することで、伸縮型キャリングハンドル付きキャスターを取り付けることができるようになっている。
Lian Li PC-TU300シリーズ専用 キャリーカートキット ブラック TC-01 国内正規代理店品
- 出版社/メーカー: LIANLI
- 発売日: 2015/10/20
- メディア: Personal Computers
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要はスーツケースと同じ要領で運搬が可能になるのである。
フリップハンドルがついてるだけの製品や、キャスターがついてるだけの製品は他にもあるが、いざ長距離を運ぶとなればPCは地面に置いて、腰の高さまでハンドルを伸ばして動かしたいものだ。つまり伸縮型ハンドルとキャスターは両方必須だと言える。その両方を備え、かつフルスペックのATXボードが使用可能なこのケースはまさに「キング・オブ・分かってる」、この世にノーベルポータブル賞という賞があれば受賞間違いなしの革新的PCケースだと言えるだろう。
このケースなら階段の上り下り、新幹線や長距離バスへの持ち込み、道路や廊下の移動も問題がない。4-5万の出費は痛いが、これでPC運搬問題は解決だ!と思っていたら、イベント直前で、のっぴきならない事情からGlobal Game Jameへの参加をキャンセルせざるを得なくなってしまった。ケース変更計画も一旦見送りである。
差し迫った長距離運搬の必要性から解放された私は、出費を抑えつつ、万人がPC-TU300並のポータビリティを実現する方法について考えてみた。PC-TU300は値段もさることながら、在庫があまりなく、入手が困難なのだ。そこで見つけたのが、サンワダイレクト製キャスター付きCPUスタンド100-CPU001である。
サンワダイレクト PCスタンド デスクトップ用 キャスター付 ほこり対策 無段階調節 100-CPU001
- 出版社/メーカー: サンワダイレクト
- メディア: エレクトロニクス
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この製品は「CPUラック」「PCスタンド」などと呼ばれるカテゴリの製品で、PCケースにタイヤを追加するアクセサリだ。この一見ドローンを思わせるX字のキャスターは、X部分の角度をバックブレーダーのように変形させることによって、10cm〜24cmまでのPCを挟み込むことができるように設計されている。
上の写真が、現行のタワーPCに100-CPU001を装着したところになる。
試してみて分かったが、装着に関しては、ケースの中央にキャスターを持ってくるより、重心をとらえることが重要なようだ。つまり、場合によってはケースの前寄り、または後ろ寄りに装着する必要がある。また防震ジェルシートなどを使うなどして、ある程度キャスターとケースの間を固定しておかないと、キャスターがスムーズに前進しなかったときにPC滑って前方に飛び出してしまうことがある。本格的に運搬に使う前に一度外に出て試しておくといいだろう。
ここまでしても、PC-TU300とTC-01の組み合わせに比べれば、高さは膝のあたりまでしかこないから、スーツケースのように押して歩くことは難しいし、「おかもち」的に持ち上げることもできない。
しかし、冷静に考えてみると、PCを持ち上げる必要がどれくらいあるだろうか? 日本社会のバリアフリー化は遅れているという声も聞くが、主要交通機関は何らかの形でエレベータかスロープによる移動が可能になっている。果たしてPCを持ち上げられなくて困るシーンが一年に何度あるというのだろうか。今やPCは前進できれば良いのだ。宙に浮く必要はそれほどない。
たとえば、最寄り駅から、Global Game Jam で参戦を予定していた東京工科大学八王子キャンパスまで鉄道を使って移動することを考えてみる。
らくらくおでかけネットというウェブサイトを使用すると、指定駅から指定駅の間がバリアフリー化されているかどうかを調べることができるのだが、これを見る限り、そして自分が知る駅施設の記憶と照らし合わせても、大阪府内の最寄り駅から八王子みなみ野までバリアフリーで移動することは可能である。
もちろん、スロープ等のバリアフリー設備はPCを運ぶために取り付けられた経路ではないので、わきまえなくてはならないが、筋力が限界を迎えた時も行き詰まることがないと分かっているのは心強い。
しばらくこのスタイルを試してみようと思っている。日本のバリアフリー社会を信じるのと、要所要所で「がんばる」形でいってみたい。